相手の不幸を肩代わりして、幸福を分け与える――。 エーデルシュタイン家の娘たちは、そんな特殊な力を持って生まれてくる。歴代当主は、娘たちを有力貴族に嫁がせることで勢力を拡大してきた。 貴族たちが求めるのは娘の力だけ。したがって、これは愛のない純粋な政略結婚なのだった。 そんなエーデルシュタイン家に生まれたクシェルには、特殊な力がなかった。そのため彼女は「石ころ」と呼ばれ、虐げられてきた。 新興貴族のエルツ男爵家に嫁いだクシェルは、自分に力がないと知った相手が失望し、殺されることさえ覚悟していた。 しかし夫となるイェレミアスは、力のことには一切触れず、クシェルを温かく迎え入れるのであった――